公開私信(というかヨタ話)

wata909さん、むーんどうなんだろう。 - 日々是戯言・Geo出張版を読ませて頂きました。

実際に必要なのは,「調査地点」をプロットしたときに,そこがどの様な植生もしくは土地利用なのかである。現状の1/25Kの地形図でも,広葉樹,針葉樹,荒れ地の間には明確な境界が引かれているわけでは無いので,オルソ化した画像を,日本国内全体,しかも大縮尺で整備してくれるなら,植生や土地利用境界が地形図上から無くなっても,実質的には問題ないと思う。

これにはなるほどです。思わず、昔のことを思い出しました。

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20世紀の終わり頃、とある主題図を作りました。地図を使ってお仕事する、玄人向けの地図です。

ネットはナローバンドなダイアルアップ、ハードウェアも(今から比べれば)貧弱な時代。成果品は紙地図でしたが、気張ってビューワ付のCD-ROMをオマケでつけました。CD-ROMって案外安く出来るなと思ったものです。

データはGISアプリケーションで作ったので、検索性のあるビューワ+データに仕上がりました。容量に限りがあるCD-ROMに収めるため、背景の地形図画像にも工夫をして、軽くて見やすいものが出来たと自賛。まあ今から見れば、おもちゃみたいなものです。

成果品の頒布が始まると、お付き合いのあったコンサルさんから連絡が来ました。「CD-ROMについて教えて欲しい、詳しく知りたい」と。

早速翌日いらして、根掘り葉掘りの質問。大半は頒布したデータを、GISアプリケーションにぶち込めば解決できるものでしたが、GISもさほど一般的ではなかったので、まあ仕方ないなと思いながら対応していました。

そして最後の質問。

「主題については、画面を見れば分かる。凡例だって画面に出ている。知りたいのは、任意地点(ボーリングする地点とか)の土地利用。それはクリックすれば出てくるの?」

背景の地形図はありますが、ただのラスタ画像。データの持ち方も合わせて説明し、それは無理だと納得してもらいましたが、落胆したご様子。「それが一番知りたいのに」と言い残してお帰りになりました。

見当違いなものをつくっちゃったかと、一瞬冷や汗をかきました。「いやいや、そこまでデータ化する予算は元々無いし、背景で確認してもらうしかない、そのための背景だし。」

地図を使ってバリバリ稼いでたコンサルさん、地図のプロユーザです。言うまでも無く読図はお手の物で、僕なんかより地面と地図の関係を知っています。今にして思えば、承知の上の発言だったと思われ…

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以上、回想でした。以下、レガシー地図屋の飛躍した妄想話です。あと少しで終わります。


瑣末な出来事でしたが、紙地図からの変化を垣間見た気がしました。もちろんデジタル=画面とかではなく、利便性だけでない、質的な変化。

視覚でしか得られない情報を、位相あるデータ、あるいは位相を計算できるデータで持つ。一見、無関係な地物同士に関係性を持たせて、位相空間としてモデリングする。位相構造化。

これに計量的なデータ(距離空間というのですかね?)と結合したとき、「地図の可能性」はぐっと広がると思うのです。地理的な関係性を数式で抽出できる。ということは、GISの教科書的な使い方だけでなく、例えば地理的特徴にあわせたダイナミックな図式の生成とか、用途に合わせて変形する地図。や、妄想が過ぎましたw

地図の宿命として、更新作業があります。大きな仕様でつくっちゃっても、更新可能でないと意味がありません。理想を追い求めすぎると、事業としては失敗しそうです。位相構造は作って維持していくのは厄介。

距離空間上のセンサーや自動認識などの自動化技術は、飛躍的に進化しています。これは量の前に屈しないことを意味します。また植生図やその他データも、今後は位置の基準である基盤地図情報に合わせて作られる(何だか都市計画に似ています)。位相空間的な技術の飛躍もあるといいなと思います…



今や、そんなものはいらない?図形をぶつけ合う空間演算で十分?確かにそうかも…