侠気の賜物

オープンソース GIS グラス アプローチ 第3版 日本語版/ 訳 植村哲士


GRASSの解説書を、日本語で読める日が来るとは思わなかった。今のところ使う予定はないが、応援する意味も含めて購入。

本書はただの説明書にとどまらず、手法選択の考え方や結果の考察、改善方法も提示されていて、教科書な内容になっている。GRASSは研究者向けのハードな解析系GISだけど、他のGIS利用者も読んで損はない内容。勉強になる。

平易で分かりやすい文章のおかげで、日常的にGISを使っている人なら、問題なく読み進められると思う。GRASSが身近に感じられること請け合いです。

ぼちぼち勉強して、ラスタ演算機能をQGISのGRASS Pluginで使えるようになればいいかな。


ちなみにGRASSでのベクタデータは、トポロジー埋め込みが基本。

線の交点でノードなしにベクタが交差している地図は、「スパゲッティ地図」と呼ばれ、位相幾何的には誤っている

なんて書いてあって、嬉しくなってしまった。E00で渡せば、トポロジーもそのまま使えそうだ。

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内容もさることながら、「訳者あとがき」がすごい。

今回、地理学・コンピューター関連の出版物を出している幾つかの日本の出版社に翻訳出版企画を持ち込んだものの、市場性の無さを理由に断られてしまった。ユーザーが少なく市場性がないからソフトウェアの解説書の日本語訳が出せず、日本語の解説書がないからユーザーが増えない、まさに、悪循環である。

このような膠着状態を打破するにはある種の侠気(狂気)が必要であろう、と思いたち、自費出版を試みた結果が、この訳書である。

買ってよかった