もしも地図画像がGeoTIFFならば(ユースケース編)・3

以下、GeoTIFF(with NODATA)な地図画像が提供されていると仮定したお話。

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山陰で小さな測量コンサル業を営むあなたは、現場から戻ると土木CADで1:500〜1:2,500程度の大縮尺図と格闘する毎日。GISっぽい仕事を請けるときもありますが、実はCADとの違いもよく分かっていません(社員には秘密にしています)。

そんな繁忙期、とある調査業務をうっかり受託してしまいました。やや広域な範囲をGIS使って分析する必要もあるようです。平成の大合併で市域が広くなり、作業量が増えた割にはお安め価格。利益は以前とそう変わらず…。困ったなと思いつつもまずは2万5千分の1地形図で計画を立てます。

普通の画像アプリケーションで表示・印刷



「数値地図25000(地図画像)オンライン提供」で隣接する4図葉をダウンロードでお手軽購入。計680円。早速、OS付属の画像ビューワ*1で地図画像を確認します。

GeoTIFFタグを無視する普通のアプリケーションでは今まで通り。よく使っている紙の地形図と同じ体裁であなたは安心します。自慢のHP製プロッタで紙に等倍出力して切ったり張ったり、ぐりぐり書き込みしながら作業に没頭します。

ある程度資料も完成したところでデータに起こした方がいいな、と思い立ちます。しかし会社にひとつだけあるGISアプリケーションは、中堅社員が占拠して使えそうにありません(彼、怒ると怖いし)。

そういえば。先日の会合でGISフリーソフトウェアがあると聞いた事を思い出します。そこでパソコンに詳しい新人君をサポート役に抜擢しました。

GISアプリケーションで表示



作業内容を聞いた新人君、Quantum GISで地図画像を読み込みます。少し回転して表示する地図画像。あなたは不安になります。

「地図画像、斜めっているぞ。大丈夫なのか」
「大丈夫っすよ。地図画像はUTM座標のGeoTIFFなんすよ」
「そ、そうだったな(知っているふりをしよう)」
「ここにベクトルのデータ起こせばそのままUTM座標になるっす」
「うむ(ほうほう)」
「じゃあ全部読み込んで並べるっす」

何ということでしょう。あるはずの図郭外の余白がなく、ぴったり接合して表示するではありませんか。余白で隣接図が隠れません。Quantum GISがNODATAのピクセルを不可視化したんですね。これなら紙で張り合わせをしなくて済んだかも…。GISアプリケーションから印刷すればよかったと少し後悔。

リサンプルや結合や投影変換

リサンプル
作業を続けるうちにアプリケーションによる回転表示でなく、実際に回転した地図画像が必要になりました。GDALを使えば実に簡単です*2。新人君は華麗にコマンドを叩きます*3
gdalwarp -dstnodata 0 533310.tif 533310_jgd2k_utm53.tif
これでAdobe Photoshopでも回転した状態で扱えるようになりました。また回転で新たに生まれる余白も、Quantum GISではNODATAとして扱えます。リサンプルして画像そのものを回転すれば、アプリケーションによる回転表示よりも高速な画面出力を期待できます。
結合
どうせならと4図葉を結合してひとつのファイルにすることに。先ほどのリサンプルしたファイルを使います。
gdal_merge -n 0 -pct -o matsue.tif (input_files...)
NODATAのおかげで余白に隠されることなく結合しました。当然ながら隣接図との接合もぴったりです。これならPhotoshopでの加工も簡単です。
投影変換
そうそう、納品物のひとつに経緯度座標系の地図画像がありました。オリジナルのファイルを使って経緯度座標系に投影変換後、2次メッシュでくり抜きを行います。
gdalwarp -t_srs EPSG:4612 533310.tif 533310_jgd2k_bl.tif
gdal_translate -projwin 133 35.5 133.125 35.416667 533310_jgd2k_bl.tif 533310_jgd2k_bl_crop.tif

そして納品の日

調査も無事に終わり、データも報告書も納期前に完成させたあなた。珍しく前倒しで納品し、お客様からも良い出来とお褒めの言葉。久しぶりに満足いく仕事でした。気を良くしたあなたは納品の帰り道、街道沿いの駐車場付き居酒屋で慰労会を催します。

「いい仕事だったな」
「そうっすね社長!ちょう良かったっす!」
「何もかも数値地図25000(地図画像)』が GeoTIFF(with NODATA) なおかげだな」
「そうっすよ社長!ちょう楽っす!」
「あはは」
「うふふ」

(小話は終わり) (つづく)

*1:そこ、まだXPなの?と言うんでない

*2:Quantum GISGUIフロントエンドあり

*3:ArcGISの「レクティファイ」に相当