久しぶりに地図を堪能した


昨年の話で恐縮ですが、日本大学文理学部学術展が開催していたので、最終日前日に慌てて行ってきました。桜上水に昼間来たのは初めて(京王線桜上水行きが最終なので)。

ジョイント展示ということで、大変なボリューム。半日程度ではぜんぜん足りなかった。
メインの「江戸・東京発達史」では明治以降の旧版地形図を中心に民間地図や空中写真も数多く展示され、気が付いたら閉館時間になっていた。最近は紙地図を使う機会も減ってしまったが、大きく張り出された迫力ある展示には参ってしまった。

たばこや東京地図

語り草の幻の地図。実物は初めて見た。いかにも昭和30年代、ベタを中心とした特色6色。いい感じ。地図は特色がいいなあ。

当時、街角に数多くあった「たばこ屋」に道を尋ねることが多く、たばこ屋に詳細な市街図を置けば有用だろうとの発想で企画されたもの。地図業界の中心的存在であった日本地図研究所が企画製作、5千分の1で23区を覆う予定だったとか。
大した資料も無い時代に、一民間企業では無理だろうと思える企画。実際、高度成長期に入った東京の激しい変化に対応できず、お蔵入りしたとのこと。無理もない。

その後市街図は、地図出版の一大ジャンルとして隆盛を極め、かの森下氏の「ぴあMAP」を経た上で、Web地図となった訳だが。

一見すると似ても似つかない「たばこや東京地図」とWeb地図。しかし地図としての目的は、ほとんど同じということに気づく。さらに「たばこや東京地図」のアイディアを下敷きにしたと思える「ぴあMAP」は、必要な主題情報を抽出して(映画館とか博物館・美術館とか)、共通の基図にきれいにビジュアライズするというもの。
すなわち毎日使うWeb地図は、「動的なぴあMAP」だといえる。先達の思いが結実した、ある意味市街図の最終形な気がする。

高画質の謄本交付

旧版地形図は当時の現物が多く展示され、エッジが立った線に興奮した。きれいで見やすい。かつての地形図は異常に緻密に描かれていて、印刷の質が見やすさに直結する。
確かに謄本交付で簡単に入手できるし、画像データベース化によって画質も交付のスピードも向上した。しかし本物の印刷にはまるで敵わない。代表的な時代だけでもいいので、高画質の印刷物や画像で謄本交付できないだろうかと、ずっと思っている。
今のラスター画像だって画質が良いとはいえない*1。でも大元の原図はもう無いのだっけ?


とか、テーマの「江戸・東京発達史」とはぜんぜん違う気持ちを抱いたのでした。すいません。



床張り地図は単純に楽しい。今回はRFタグを埋め込んだ「時空ナビ」なるシステムが動いていた。結構人気の様子。しかしタグリーダーの「杖」の扱いが、やや面倒に感じた。この手はエアタグ的なほうが、素直に体が動く感じだ。

床張り地図は日本近代測量最初期の傑作と云われる「5千分1東京図測量原図」を中心として、2万分の1迅速測図も使っていた。
かつて復刻した「5千分1東京図測量原図」は、抜粋で「明治前期測量中央官衙街 2000分1彩色地図」として入手可能だけど、全体の36面は入手困難のまま。
日頃お世話になっている地図センターの某氏に聞いたところ、再度復刻を検討中とのこと。画像での提供も視野に入れているらしいので、期待してます。

*1:どうみても2値化がおざなり