侠気の賜物

オープンソース GIS グラス アプローチ 第3版 日本語版/ 訳 植村哲士


GRASSの解説書を、日本語で読める日が来るとは思わなかった。今のところ使う予定はないが、応援する意味も含めて購入。

本書はただの説明書にとどまらず、手法選択の考え方や結果の考察、改善方法も提示されていて、教科書な内容になっている。GRASSは研究者向けのハードな解析系GISだけど、他のGIS利用者も読んで損はない内容。勉強になる。

平易で分かりやすい文章のおかげで、日常的にGISを使っている人なら、問題なく読み進められると思う。GRASSが身近に感じられること請け合いです。

ぼちぼち勉強して、ラスタ演算機能をQGISのGRASS Pluginで使えるようになればいいかな。


ちなみにGRASSでのベクタデータは、トポロジー埋め込みが基本。

線の交点でノードなしにベクタが交差している地図は、「スパゲッティ地図」と呼ばれ、位相幾何的には誤っている

なんて書いてあって、嬉しくなってしまった。E00で渡せば、トポロジーもそのまま使えそうだ。

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内容もさることながら、「訳者あとがき」がすごい。

今回、地理学・コンピューター関連の出版物を出している幾つかの日本の出版社に翻訳出版企画を持ち込んだものの、市場性の無さを理由に断られてしまった。ユーザーが少なく市場性がないからソフトウェアの解説書の日本語訳が出せず、日本語の解説書がないからユーザーが増えない、まさに、悪循環である。

このような膠着状態を打破するにはある種の侠気(狂気)が必要であろう、と思いたち、自費出版を試みた結果が、この訳書である。

買ってよかった

今年は違うらしいよ

10/2と10/3、恒例のデジタルマップフェア2009(日本地図センター主催)が開催されます。Webサイトも刻々と更新しているようです。頑張っています。

出展団体さんの顔ぶれも、「数値地図フェア」時代とは随分と変わった。今にして思えば、当時は実に素朴でした。他業界との競争にも晒されていなくて。こんな未来になるとは、ちょっと予想外(というか速すぎ)。


来年はG空間EXPOと統合するとの話もあり、デジタルマップフェアとしては今年が最後かも。
会場は都心も都心の東京国際フォーラム、交通至便。しかも2日目は土曜日。「関係者以外」も足を運んでみてはいかがでしょうか。


http://mapfair.jp/henshuzakki08.html。「お酒の地図」ということで。活断層近くには、良い水が湧くといいます。よって蔵元と地震に関係性があるかも?

(蔵元マップ)平成19酒造年度金賞受賞蔵マップ : Macと日本酒とGISのブログ

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次回こそ、前エントリの続きにしたいかな(無闇に忙しくてねー)

DEM補間計画・1

DEMのnodataを有効な値で埋めたくなること、ありませんか?僕はあります、先日もありました。
もちろん"-32768"とかを"-9999"や"0"に置換するのではなく、周囲の値から補間して埋めたい。地形を補間したい。要するに欠損箇所埋めや、湖沼や河川の水抜きですね。

nodataを無視してDEM生成、該当箇所を差し替えればよい。でもメンドクサイ。また高価なアプリケーションなら、手間を掛けずにできるでしょう。しかし今使っているやつは、画像・地形関連がいまひとつ弱い*1。コマンド一発でやりたい。プログラミングなんてもってのほか。楽したい、楽がイチバン。


そんな不精な諸兄に、FOSS4Gからの贈り物。


gdal_fillnodata.py


そのものズバリ、なんてピンポイント!


無駄に忙しいので、またつづく(寝不足)。

*1:GRASS使えよって言わないでw

2次メッシュ病

標準地域メッシュ。統計に利用するためにつくられたメッシュシステム。なかなか合理的に出来ている。全国を覆う実測図である(あった)2万5千分の1地形図を基準に決定したのだろうと思われる*1

地形図1図葉=第2次メッシュ。中縮尺の仕事が多かったせいか、これをひとつの単位として、随分と地図やデータをつくった。ファイル名は533946.shpとか。第3次メッシュでもファイル名は8文字で収まり、DOS(!)でも都合がよかった。

現在はシームレスが尊ばれる。GISの仕組みも変わった。なので以前より地位は低下したと思うけど、若い人たちはどうなんでしょうか。


しかし今でも2次メッシュに捕らわれてしまう(僕は)。

シームレスな地図コンテンツを作っていますが、どうも2次メッシュでまとめてしまう。
仕様は自由にできるので、どうやってもいいのですが。
さらに細かく分割する場合でも、基準は2次メッシュ。ディレクトリ名も2次メッシュ。色々と2次メッシュ。
慣れてて楽ではあるけど、何だかな。


測量畑の人だと、国土基本図の図葉コードかな?

*1:真偽のほどは分かりませんです

早く知りたい

相変わらず地理院関連のお話。


日本国際地図学会平成21年度定期大会のエントリが上がっている。

国がどのような骨格データを整備するのか、それによって民間での二次利用の在り方も異なってくる。関連産業の活性化のためにも非常に重要な問題であろう。
地図学会定期大会 - ちずらぼのちずらぶ

業として地図に関わる我々にとってはあまりに重要。仕込みの関係上、半年から1年先程度の見通しは立てたい。結構困っています。

基本図体系の変化については、知りうる情報に乏しい。電子国土基本図と従来の地形図が、同じものだと思っている人も多い。紙の地形図がWeb供覧になるだけでしょ、とか。そもそも電子国土基本図自体があまり知られていない*1

すでに「電子国土基本図(地図情報)修正測量業務」として発注されており、プリミティブなレベルでの仕様は確定しているはず。取得項目や取得基準、整備範囲の精度等の情報は、もう公表できると思うけど。リリース日とまで行かなくても、リリース時期ぐらい発表して欲しく思う*2

地理空間情報活用推進基本法の施行で測位とGISの連携が歌われている以上、真位置データが重要視されるのは当然のことで、その意味では基盤地図情報電子国土基本図の必要性は理解できる。
その一方で、紙地図をはじめとした転位・総描により空間表現された成果の需要もまだ大きい以上それを放棄するわけにはいかない。
測位か編集か。このあたりの落とし所は非常に難しい。

思い切って国と民間の役割分担はあってもいいと思うが。とすれば、その枠組みの中で必要なデータ項目や属性を共有化することも重要だと思う。

すべての機関は、常に予算不足とリソース不足にもがいている。id:hfuさんも拙エントリのブクマで述べられていたが、仕組みつくりで解決出来ないかな、リソースの共有。悪くないアイディア。

転位・総描はいつでも問題。科学的な根拠に基づいているとはいえ、相当に恣意的。よって手間もかかる(=お金がかかる)。最後は絵作りになるので、すべて自動化で解決できる訳でもない。民間も含めて研究は行われているようだが、民間地図と基本図では、話がやや違うと思う。まあ、真位置データに転位・総描パラメータを持たせるなら別だけど*3

ん、転位・総描パラメータが、異なる精度レベルそのものになるのかな?位相がキチンとれていれば、そう破綻はしまい。地物はインスタンス
しかしこれは理想論だな…


*1:世に出てないから、仕方ありませんけどね

*2:この手の情報は、いつも裏から伝わってくるw

*3:これはこれで、手間がかかる

ルーチンワーク

久々に測量成果の承認申請。面倒な事務作業。


「測量計画機関のワンストップサービス」の一環として、インターネットで出来るのね。恥ずかしながら知らなかった*1
相変わらず数が多いと面倒だけど、郵送しなくてよいのは気持ちが楽。投函忘れがちだし。
ルーチンワークの中では、気づかないことも多いです。


測量成果ワンストップサービス
http://onestop.gsi.go.jp/onestopservice/

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GDAL/OGR漬けの日々。何故だか忙しいです。関連ネタはそのうち。

*1:id:dambiyoriさんのニコ生で知りましたw

ASTER GDEM・3+GDAL等高線・3

というわけで、ASTER GDEMからつくった陰影段彩画像(id:vec2ras:20090726:1248594842)と、同じくASTER GDEMからのKML等高線(id:vec2ras:20090801:1249113346)をGoogle Earthに載せ、配信されるいくつかのレイヤも表示させると、ちょっとした地図が出来る。


配信されるレイヤは地域差があるが、有難いことに択捉島では河川が配信されている。提供はZ社さんの模様。


よく見ると、ややおかしなところがありますね。


河川が地形とずれているところが目に付く。鳥肌が立つ感じ。陰影段彩+等高線と河川はソースが違うため、これは仕方ない。とはいえ尾根越えしちゃっているところもある。衛星画像で見ると河川データが間違っているようだ。この手のズレは、ひとつでもあると全体の信頼性が無くなっちゃうので、旧来の地図屋さんは随分と気を使っていた。ここはまあ、日本の主権が及ばない地域。止むを得ないかな、Google Earthだし。


新しい基本図時代では、真位置での重ね合わせになり、日本国内ではこういった事は起こらないはず。他機関も基盤地図情報を位置の基準としてデータ作成すれば、重ねあわせ時のズレ問題は無くなる。でも真位置が必要でない地理情報は多くあるし、過去の資産の大半は真位置ではない。位置や精度に関する取り扱いのアナウンスは、より必要になるでしょうね。


話がズレた。


ASTER GDEMとGDALのおかげで、夢の全球レベル等高線をつくる目処が立った。作成目的は、もちろん僕がニヤニヤするため。不純な動機でASTER GDEMをダウンロードしています。地球科学の研究者の皆さま、ごめんなさい。

とりあえずヒマラヤの50m等高線をつくるかなー