もしも地図画像がGeoTIFFならば♪(メロディは「もしもピアノが弾けたなら」)・1
国土地理院刊行の数値地図25000(地図画像)。オンライン提供は一枚170円、一枚からダウンロード購入できます。CD-ROM版と違い必要な図葉だけ、ダウンロードで入手できて大変手軽です。長らく刊行している「国土地理院の地形図」を画像として扱えるため、GIS-erから地図好きのおじいちゃんまで幅広く利用されているようです。
ラスタ画像ゆえにGIS的な利活用は限定されますが、図式に則った「絵」になっているおかげで、GISを駆使して絵づくりに悩む必要もありません。背景程度なら十分に使用できます。
さてこの地図画像。TIFFという汎用的なフォーマットで提供されており、ほとんどの画像アプリケーションで利用できます。アプリケーションを選ばないのは大変良いとして、紙の地形図がそのままラスタ画像になった状態に近く、地理的な座標を画像から得ることはできません。図郭外に整飾されたティック(短線)や注記を読めば分かりますが、それでは悲しい。
そこで国土地理院では地図画像と共に配布される「管理ファイル」と呼ばれるCSVファイルに、座標情報を記載しています。図郭四隅のラスタ座標値と経緯度値、UTM座標値を対応させたものです。この管理ファイルを使えば、地理的な座標を与えるのは簡単な話。ならば最初から地理的な座標を与えた画像、 GeoTIFFで刊行すればいいじゃん!と、誰しも思うことでしょう。実際、TIFFのヘッダ部に管理ファイルの内容と測地系や座標系やらを記述するだけの話です。
(つづく)
地形関連が充実しそうです
2月に行われた国土地理院の入札です。
精密基盤標高地図データ作成業務
- 北海道及び中部地区
- 東北地区1
- 東北地区2
- 関東地区
- 北陸地区
- 近畿及び四国地区
- 中国及び九州地区
何が出来るかはお楽しみ。業務種別が「地図調製」なので、あれかな?
遡って昨年の11月には、航空レーザ測量の入札がありました。
航空レーザ測量による精密基盤標高データ整備業務
- 北海道地区
- 東北地区
- 関東地区I
- 関東地区II
- 北陸地区
- 中部地区
- 近畿地区I
- 近畿地区II
- 中国地区
- 四国地区
- 九州地区
個人的には「関東地区I」と「関東地区II」に、待望の多摩地区が含まれているか気がかりです。
他にも「精密3D地図データ作成業務」とか「精密基盤標高地図データ等の表示システム設計業務」とかあって、いろいろと気になる年になりそうです。
電子国土基本図のことを書きたいのですけど。考えを(てよりは気持ちを)整理していますが、なかなかまとまりません。
基本図のデザイン
あらら、ネタにしようと思っていたのに書かれてしまった。
【地図ウォッチ】 第79回:2万5千分の1地形図に代わる新たな“基本図” - INTERNET Watch Watch
さすがプロのライターさんだけあって、簡潔に分かりやすくまとまっている。
新しい国の基本図である電子国土基本図は、見た目だけでなく取得項目・取得基準に大きな変更がある。
話題になった「植生界の削除」や「送電線の削除」*1のほか、取得する項目でも基準が変わり、統廃合や減少されるものもある。例えば「2万5千分の1地形図」での「道路橋」は、長さ20m以上で取得されているが、「電子国土基本図」は500m以上での取得となる。理由は次のとおり。
河川の上部では橋梁であることが明らかなため,特に記号を設ける必要がない.また,上位構造物で遮蔽される下部構造物は表示しないことから,道路と鉄道等の階層関係は明らかである.ただし,判読性を考慮し,長さ500m以上の高架的な橋梁は取得する.
色々と意見はあろうが、すでにデータの整備は始まっている。詳しくはこちらで確認して欲しい。
電子国土基本図(地図情報)の取得基準(PDF)
見てくれのデザインはともかく、根幹のデザインが大きく変わる(もちろん、見てくれにも影響する)。しかし一般にはあまり知られていなくて、勝手に危機感を抱いている。時間が取れれたら、きちんとエントリーしたい(かな)。
*1:個人的には鉄塔・送電線マニアさんたちが心配です
脳内散歩地図
定期購読の方はお手元に届いていると思います。日本地図センターの「地図中心2010年1月号」。
予告通り、江川達也さんの地図漫画「脳内散歩地図」が始まりましたよ。本当に…
連載第1回はスペシャル30ページ掲載!って誌面全体の60%も占めています(通常は4ページ程度だそうです)。
妄想度が高い地図もありますが、江川さん的世界遺産である「三田用水」は、各年代の地図と現地写真付き。結構詳細です。ちなみにアシスタントは、ジャンクションマニアの水野遥さん(東京大学物語)。
確か1年間連載だったと記憶しています(うろ覚え)。大きな書店の地形図売り場にはありますので、ぜひ。定価480円。
いつの頃からか、古地図ばかりになってしまった地図中心…。これを機に変わって欲しいぞ。
久しぶりに地図を堪能した
昨年の話で恐縮ですが、日本大学文理学部学術展が開催していたので、最終日前日に慌てて行ってきました。桜上水に昼間来たのは初めて(京王線は桜上水行きが最終なので)。
ジョイント展示ということで、大変なボリューム。半日程度ではぜんぜん足りなかった。
メインの「江戸・東京発達史」では明治以降の旧版地形図を中心に民間地図や空中写真も数多く展示され、気が付いたら閉館時間になっていた。最近は紙地図を使う機会も減ってしまったが、大きく張り出された迫力ある展示には参ってしまった。
たばこや東京地図
語り草の幻の地図。実物は初めて見た。いかにも昭和30年代、ベタを中心とした特色6色。いい感じ。地図は特色がいいなあ。
当時、街角に数多くあった「たばこ屋」に道を尋ねることが多く、たばこ屋に詳細な市街図を置けば有用だろうとの発想で企画されたもの。地図業界の中心的存在であった日本地図研究所が企画製作、5千分の1で23区を覆う予定だったとか。
大した資料も無い時代に、一民間企業では無理だろうと思える企画。実際、高度成長期に入った東京の激しい変化に対応できず、お蔵入りしたとのこと。無理もない。
その後市街図は、地図出版の一大ジャンルとして隆盛を極め、かの森下氏の「ぴあMAP」を経た上で、Web地図となった訳だが。
一見すると似ても似つかない「たばこや東京地図」とWeb地図。しかし地図としての目的は、ほとんど同じということに気づく。さらに「たばこや東京地図」のアイディアを下敷きにしたと思える「ぴあMAP」は、必要な主題情報を抽出して(映画館とか博物館・美術館とか)、共通の基図にきれいにビジュアライズするというもの。
すなわち毎日使うWeb地図は、「動的なぴあMAP」だといえる。先達の思いが結実した、ある意味市街図の最終形な気がする。
高画質の謄本交付
旧版地形図は当時の現物が多く展示され、エッジが立った線に興奮した。きれいで見やすい。かつての地形図は異常に緻密に描かれていて、印刷の質が見やすさに直結する。
確かに謄本交付で簡単に入手できるし、画像データベース化によって画質も交付のスピードも向上した。しかし本物の印刷にはまるで敵わない。代表的な時代だけでもいいので、高画質の印刷物や画像で謄本交付できないだろうかと、ずっと思っている。
今のラスター画像だって画質が良いとはいえない*1。でも大元の原図はもう無いのだっけ?
とか、テーマの「江戸・東京発達史」とはぜんぜん違う気持ちを抱いたのでした。すいません。
床張り地図は単純に楽しい。今回はRFタグを埋め込んだ「時空ナビ」なるシステムが動いていた。結構人気の様子。しかしタグリーダーの「杖」の扱いが、やや面倒に感じた。この手はエアタグ的なほうが、素直に体が動く感じだ。
床張り地図は日本近代測量最初期の傑作と云われる「5千分1東京図測量原図」を中心として、2万分の1迅速測図も使っていた。
かつて復刻した「5千分1東京図測量原図」は、抜粋で「明治前期測量中央官衙街 2000分1彩色地図」として入手可能だけど、全体の36面は入手困難のまま。
日頃お世話になっている地図センターの某氏に聞いたところ、再度復刻を検討中とのこと。画像での提供も視野に入れているらしいので、期待してます。
*1:どうみても2値化がおざなり
基盤地図情報(標高)をGDALやGRASSで使いたい
基盤地図情報(標高)のDEMは、XMLで記述されています。記録や流通の理念としては良いのでしょうが、実務レベルではちょっと厄介です。でかいし。特にDEMの場合は、対応するアプリケーションも少なめです。
具体的に困っている人がいたので、知っていることを記しておきます。他にも方法は沢山ありますが、このあたりが手軽かと。
ARC/INFO ASCII GRID形式にする
単純な書式のテキストファイル*1なので、Perlとかで簡単に処理できます。拡張子はGRD通常".asc"になります。書式はhttp://docs.codehaus.org/display/GEOTOOLS/ArcInfo+ASCII+Grid+formatに出ていますが、それでは身も蓋も無いので、5mメッシュを例に少し説明します。
ヘッダー部は次の通りです。
ncols 225 #X軸のピクセル数 nrows 150 #Y軸のピクセル数 xllcorner 139.562500000000 #左下X(西)の座標 yllcorner 35.908333333667 #左下Y(南)の座標 cellsize 0.000055555556 #1ピクセルあたりの大きさ NODATA_value -9999 #「データ無し」の値
- 5mメッシュは1ピクセルあたり0.2秒なので、0.2/3600=0.000055555556になります(10進表現)。
- 基盤地図情報(標高)では「データ無し」は記載されないので、一般的な"-9999"を割り当てておきます。
データ部は、左上を原点としたマトリックスです。区切り文字はスペースです。この場合は225列、150行になります。またPRJファイルも用意しておくと便利です。これには座標系や測地系、投影法が記述されています。
5m_grid_jgd2k.grd
ncols 225 nrows 150 xllcorner 139.562500000000 yllcorner 35.908333333667 cellsize 0.000055555556 NODATA_value -9999 -9999 -9999 -9999 9.19 9.17 9.10 ……(225列) -9999 -9999 9.19 9.20 9.15 …… : : (150行)
5m_grid_jgd2k.prj
GEOGCS["JGD2000",DATUM["D_JGD_2000",SPHEROID["GRS_1980",6378137,298.257222101]],PRIMEM["Greenwich",0], UNIT["Degree",0.017453292519943295]]
生成したGRDファイルを、gdal_translateでGeoTIFFにしてしまうなら、PRJファイルは不要です。変換時に直接EPSGコードで指定してしまえばいいです。
gdal_translate -a_srs EPSG:4612 5m_grid_jgd2k.grd 5m_grid_jgd2k.tif
アプリケーションによっては、WGS84の方が都合がいいかもしれません。この場合は、EPSG:4326を指定します。現行の日本測地系2000と現行のWGS84は、ほぼ同一ですので問題ありません。旧日本測地系(Tokyo)へはEPSGコードの指定だけでは無理です。また別の話。
と、ここでEsri grid - Wikipediaを発見。こちらの方が分かりやすいかも…
フリーソフト「基盤地図情報DEMコンバータ」を使う
Windows環境なら、これを使わせてもらうのが一番手軽です。GeoTIFF, BIL+HDR,GRASS ASCII形式にしてくれます。
http://space.geocities.jp/bischofia_vb/
ZIPファイルのまま扱えるし、適当な単位でマージもしてくれます。
Windows環境でない人も、近くに一台ぐらいはWindowsマシンがあると思います。ちょっと借りてGeoTIFFにしておけば、面倒がありません。日本測地系2000のGeoTIFFが生成されますが、WGS84が入用ならgdal_translateでしてしまえばいいです。
5mメッシュは配布が3次メッシュ単位。数が多いので適当な単位でマージしておけば扱いやすいです。僕は2次メッシュ単位のGeoTIFFでストックしています。必要に応じてgdal_translateで切り出し、gdal_merge.pyでくっつけて使っています。
日本地図センター「基盤地図情報(数値標高モデル)変換サービス」を使う
http://net.jmc.or.jp/digitaldata_base_henkan.html
間違いなく、いちばんラクだと思いますw
*1:ちなみにバイナリ形式もあります
日本の新しい基本図
いよいよ、姿を見せ始めた。
……まあ、試験公開なんで。
まだ試作段階であり不備な点も多数ありますが、皆様からのご意見なども参考に、改良を重ねてまいります。
とのことなので、どんどん意見してやろうw
電子国土基本図(地図情報)の取得基準(PDF)
地図関係者なら、目を通したほうがいいです。いくばくかの着地点が見える。